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福岡地方裁判所 平成3年(ワ)1147号 判決 1994年4月26日

当事者の表示は、別紙一「当事者目録」記載のとおり。

主文

一1  別紙二「認容額一覧表」の「被告番号」欄記載の各被告は、対応する「原告番号・原告氏名」欄記載の各原告に対し、それぞれ同表「認容額」欄記載の各金員及びこれに対する平成五年一月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  右1記載の各原告らのその余の請求(原告X78同X79の各請求を含む。)を棄却する。

3  右1、2記載の各原告らと被告ら間に生じた訴訟費用は、これを三分し、その一を原告らの連帯負担とし、その余は、被告らの連帯負担とする。

二1  被告Y14は、原告X8に対し、金二〇七万七〇六二円、原告X28に対し、金四〇九万一九〇〇円、原告X33に対し、金二三三万五二〇一円及びこれらに対する平成五年一月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  右1記載の原告らの被告Y14に対するその余の請求を棄却する。

3  被告Y14と右1記載の各原告らとの間に生じた訴訟費用は、全部同被告の負担とする。

三  この判決は、主文第一項1(被告株式会社オレンジ商品に対する請求を除く。)及び第二項1に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一申立て

一  別紙三「請求金額一覧表」の「原告番号・原告氏名」欄記載の各原告に対し、対応する「被告番号」欄記載の各被告は、それぞれ同表「請求金額」欄記載の各金員及びこれに対する平成五年一月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は、被告らの負担とする。

三  仮執行の宣言

第二事案の概要等

一  事案の概要

本件は、被告らが海外商品先物取引受託業を営み、あるいはその従業員として勤務していたところ、原告らはその顧客として商品先物取引契約に関与したが、被告らの勧誘、営業行為等は詐欺まがいであり、原告らは、被告らの不法行為により取引契約に基づく出捐金等の損害を被ったとして、その損害賠償の支払を求めている事案である。

二  当事者間に争いのない事実の概略

1  被告オレンジ商品株式会社(前身は「カーギル貿易株式会社」であり、平成二年六月に商号変更がされた。以下「オレンジ商品」という。)は、表記住所地において、海外商品取引受託を業としている法人である。

2  被告Y2(別紙当事者目録番号3、以下、原告・被告については、「被告3・Y2」のように適宜、同目録番号を付けて略称する。)は、オレンジ商品の元代表取締役であり、同社の関連会社で事務所を同一のビルにしていたこともある被告泰平商事株式会社(以下「被告泰平商事」という。なお、会社法人については株式会社等を省略することがある。)の代表取締役である。

また、被告4・Y1は、オレンジ商品の現代表取締役で、被告6・Y4、同7・Y5は、取締役であり、同社の業務全般を指揮監督してきた者らであり、被告5・Y3は、オレンジ商品の社員であり、そのほかの別紙一「当事者目録」番号8ないし17の被告らは、オレンジ商品の営業担当社員である。

3  原告らはいずれもオレンジ商品の顧客であった者らであるが、それぞれ別紙四「出入金等一覧表」の「入金経過」欄記載の最初の入金日ころ、オレンジ商品との間で海外先物取引委託契約を締結し、同表のとおり、委託証拠金(以下「委託保証金」という場合がある。)名下に各金員を預け入れ、証拠金の約一割の手数料を負担して各取引をした。

4  原告らは、本件損害賠償請求債権等を被保全権利としてオレンジ商品の動産の仮差押えをするなどした後、本件訴訟を提起した。

三  争点

1  被告らの先物取引受託の業務が社会的違法性のあるものか否か。

(一) 原告らの主張の要旨

(1) 海外先物取引自体に欺まん性がある上、オレンジ商品商法は、その一部門にすぎない被告泰平商事との差玉向いにより市場と断絶し、海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律(昭和五七年七月一六日施行、以下「海外先物取引法」という。)一〇条に定める「不当な行為等の禁止」に反して、原告らを顧客として引き込むとともに、委託保証金の社内留保、両建てやころがしによる高額の手数料稼ぎに徹するなどの法に反する営業をしており、オレンジ商品らの営業行為は構造的な詐欺行為である。

(2) 被告らは、危険性の高い海外先物取引の勧誘であるのに、不特定の多数者に対し、電話で無差別に同取引の勧誘であることを秘して面談を求め、未だ契約の意思を有していなかった原告らに対し、営業社員らにおいて、「絶対に儲かる。」などの断定的言辞を用い、あるいは取引契約書に署名押印させることにより、既に注文をしているから取引をしなければならないと思い込ませて建て玉をさせるなどの違法な勧誘行為をした。

(3) オレンジ商品の営業社員らは、二〇才代から三〇才代の収入の低い原告らを市中の金融業者(以下「サラ金等」という。)の営業所に連れていき、借入れをさせてこれを委託証拠金として徴していたのであって、これらは公序良俗に反する行為というべきである。

(4) オレンジ商品では、原告ら顧客の手仕舞要求を言を左右にして拒み続けて原告らに損失を被らせており、顧客である原告らの意思を無視するその行為は、社会的許容の限度を越えた違法性を有するというべきである。

(5) 以上のように、勧誘から手仕舞拒否に至るまでの一連のオレンジ商品の行為は、極めて強度の違法性が認められ、社会的に許容されないものである。

(二) 被告ら(被告16・Y14を除く)の反論の要旨

(1) オレンジ商品は、先物取引契約の締結に当たって、顧客である原告らから売買取引契約書、通知書、同意書等にその所定事項を記載してもらい、さらにリスク開示書、手引書の交付、確認書について各契約者の署名・捺印を得るなど、法の定める委託者保護の手続を履践している。したがって、原告らは、先物取引が基本的に投機であることを認識していたものである。また、向い玉は、海外の取引所で取引することの危険性が存在するなかで、顧客と取次業者のために取引の円滑さおよび安全性を保つ上で意義を有しており、被告泰平商事も泰平グループの一関連会社にすぎず、同社も向い玉を建てることにより利益を得ていたものではない。オレンジ商品や被告泰平商事は、顧客の建て玉をロンドンのジェラルド・ナショナル・インター・コモデイテーズ株式会社(以下「GNI」という。)に取次ぎをしており、対当で建てられた玉(以下「向い玉」という。)も仕切る時は個別に決済されるから、市場と断絶したものではなく、それ自体が違法なものではない。また、オレンジ商品では、顧客らに対し、テレフオンサービスなどにより十分な生の情報を提供しており、顧客らは、営業担当者の意見を参考にして、自己の意思決定の下で売買をしていたものであり、原告らの「売直し・買直し」「途転」及び各種の「両建て」等の取引手法は、それぞれ合理的な機能を有していたもので、オレンジ商品が「ころがし」などの客殺しの手法を用いたことはない。オレンジ商品の徴する手数料は、正当な報酬であり、高額とはいえない。

(2) 有職の青年男子なら、契約締結の意思がないのであれば契約締結を拒絶するのが当然であり、オレンジ商品の営業社員が断定的判断を示して勧誘したものでないことは、リスク開示書に署名させるなどしていることからも明らかである。

(3) オレンジ商品では、原告ら顧客をサラ金に連れて行って金策させるなどの営業をしたことはない。証拠金をどのように金策するかは、各顧客の自由である。

(4) 原告ら顧客は、取引終了後に精算金を受領しており、オレンジ商品は手仕舞には応じている。

(5) 原告ら作成の陳述書は、いわれのない虚偽を捏造したものであり、信用できないものである。

2  被告らの責任の有無。

(一) 原告らの主張の要旨

(1) オレンジ商品、被告泰平商事の責任について

① 民法七〇九条、七一九条共同不法行為

両社とも有機的統一組織体として本件詐欺商法を企図し、営業社員をして実行させたものであって、両社の不法行為は客観的に関連共同するから、民法七〇九条、七一九条により全ての原告に対して責任を負う。

② 民法七一五条使用者責任

両社ともその営業社員が不法行為を行ったのであるから、それぞれ民法七一五条の使用者責任を負わなければならない。

(2) 被告勧誘員の責任

各被告勧誘員はそれぞれ自己が勧誘した原告に対し、他の一連の違法行為を行った社員らとの間で客観的関連共同性が認められるから、原告らの損害につき民法七一九条の責任がある。

(3) 被告取締役(被告3・Y2、同4・Y1、同6・Y4、同7・Y5)らの責任

① 民法七〇九条単独不法行為の責任

右の各被告はオレンジ商品の取締役であり、原告らに対して民法七〇九条の責任がある。

② 民法七一九条共同不法行為の責任

本件詐欺商法はオレンジ商品、被告泰平商事が企図し、取締役ら及び営業社員らが有機的統一組織体として詐欺行為を行ってきたものであるから、被告取締役らは、民法七一九条の共同不法行為の責任を負う。

③ 商法二六六条の三取締役責任

右の被告らは、本件不法行為について取締役としての監視責任を怠ったものとして、悪意または重過失があるから、商法二六六条の三により、原告らに対し、責任がある。

(4) 被告7・Y5の責任

被告7・Y5は民法七一五条二項の代理監督者の責任をも負うべきである。

(5) 被告5・Y3の責任

被告5・Y3は、泰平グループにおいて四番目の序列に位置する幹部社員の立場で、本件構造的詐欺商法を維持存続せしめてきたものであるから、民法七〇九条、民法七一九条の責任を負うべきである。

(二) 被告らの主張の要旨

(1) オレンジ商品では、クレジット利用の顧客らとのトラブル発生防止のために社内通達等により社員の業務遂行の指導・監督に相当の注意を払っていた。

(2) 被告3・Y2らの取締役らは、誠意を持った営業姿勢で社員教育に力を注いできており、その職責を十分に果たしていた。また、その懈怠については十分な主張立証がない。

(3) 営業社員である被告らが共同不法行為の責任を負うべき理由はない。顧客との取引について、その関与の度合いを無視して顧客の入金額すべてについて損害賠償責任を負担するという主張は、法的主張として容認できない。

3  原告らの損害額。

(一) 原告らの主張の要旨

(1) 損害金

入金額からオレンジ商品が途中出金および清算金として原告らに弁済した金員を控除した残金を損害金として請求する。

(2) 慰謝料

原告らは精神的な損害を被っており、金銭的に評価するならば、損害金の一割の金額を下回ることはない。

(3) 弁護士費用

各原告の損害金及び慰謝料の合計額の一割に相当する弁護士費用が本件不法行為と相当因果関係にある損害である。

(二) 被告らの主張の要旨

仮に原告らに対する損害賠償責任が存するとしても、有職の青年男子として十分な判断能力を有した原告らには、慰謝料請求は認めるべきではない。

4  過失相殺すべき事由の有無

(一) 被告らの主張の要旨

仮に原告らに対する損害賠償責任が存するとしても、有職の青年男子として十分な判断能力を有した原告らには、損害の発生・拡大について過失が存するので、過失相殺がなされるべきである。

(二) 原告らの主張の要旨

原告らがオレンジ商品の営業社員らの言動を信じてしまった点について不注意があったとしても、そのこととオレンジ商品商法の余りに重大な反社会性を比較すれば、原告らの不注意は、法的評価としては無視すべき程度のものである。

第三争点に対する判断

一  オレンジ商品商法の違法性について

1  先物取引の許容性の限界について

(一) 先物取引は、将来の一定時期に商品及びその対価の授受を約し、その時点までに買戻しまたは転売等をして差金決済のできる売買取引(海外先物取引法一条)である。将来の経済動向等を予測しなければならず、本質的にリスクを伴うものであり、顧客はこのことを知って契約に関与するのが普通であり、関与する以上、顧客の責任において注文、決済がされ、その利益、損失は顧客が負担するはずのものである。

右の点に関し、被告らは、オレンジ商品では顧客を勧誘し、先物取引契約を締結する際にその仕組みやリスク等を説明しており、被告らの顧客の勧誘や契約締結方法、その後の受託等は違法な商行為ではないなどの主張をし、確かに、先物取引も基本的には値動きによって差益を得ることを企図した売買である上、原告ら作成あるいは原告代理人ら作成名義の各陳述書、報告書(甲二、七、五二、六三、六七関係等、なお各原告の取引等の認定に用いた証拠は、別紙四「出入金等一覧表」の「証拠」欄記載のとおりであり、以下「別表証拠」というときは、関連する各原告についての同表記載の証拠をいう。)と乙一ないし三の各1、2、四、五の1、2、六、七、八の1、2、九、一〇と一一の各1、2、一二の1ないし3、一三、一四ないし一八の各1、2、一九、三七の1、2、四四、四九の1ないし3と被告17・Y15本人尋問の結果及び被告泰平商事代表者兼被告3・Y2本人尋問の結果によれば、オレンジ商品においては、初めて原告ら顧客に面談した際に、営業社員において簡単な先物取引の概要を記載した説明用のパンフレット(乙八の1)やオレンジ商品のパンフレット(乙八の2)及び「海外商品取引における先物取引委託の手引」(乙四、海外先物取引法四条に基づく書面)を配付し、海外先物取引の仕組み、内容、証拠金や手数料額および商品の値動き、見通しなどを説明し、「商品先物取引は相場であり、常に損得が伴い、元本保証がないこと、預託証拠金は顧客の責任で準備し、取引結果についてオレンジ商品の責任を問わないこと、売買注文は顧客の責任において行うこと」などの記載がされた確認書(乙五の1、乙個一の5等)及びリスク開示書(乙三の1)に署名をさせてこれを徴した上で、売買取引契約書(乙一の1、2、乙個一の1等)を取り交わしており、同契約書には、「建玉等が委託者らの判断と責任により行われるものであること(第三条)、売買が成立したときは委託者に書面によって通知がされること(第五条)、反対売買による決済と差益損の通知がされること(第六条)、及び委託者が保証金を預託しなければならず、追加保証金を預託しなければならない場合があること(第九条、第一〇条)」の各記載がされていること、また、保証金の入金と取引開始後は、注文伝票(乙一〇の1、2)に受注日や取引内容を記入し、その一部は「委託報告書及び計算書」とともに委託者に送付されていたこと、オレンジ商品では、毎月一回、顧客に対し、「残高照合通知書」(乙一二の1)を送付して確認を求め、顧客は残高照合回答書(乙一二の2)に署名してオレンジ商品に送り返していたこと、委託者との取引がすべて手仕舞により終了したときは、委託者から出金依頼書(乙一四の2)のほかに取引終了確認書(乙一五の2)を徴して清算し、取引を終了させていた、さらに各顧客らのためとして電話サービスにより相場情報を流していたことが認められるから、原告らにおいて先物取引の概要等について全く知らないままに本件先物取引をしていたとは到底言い難いところである。

(二) しかしながら、海外先物取引は、その仕組みが複雑であり、素人には馴染みのない専門的用語が多数使われているだけでなく、同じ商品でも限月によって値動きも異なり、気象や市場経済の動向等の影響を受け、更に国内取引と異なって為替の変動等の諸要因も作用し、この変化を予測するのは極めて困難で、取引自体が高い投機性を有するのであるから、受託業者であるオレンジ商品としては、顧客を勧誘し、委託を受ける場合には、海外先物取引の基本的知識について説明をするだけでなく、取り交わす契約書類等の内容について詳細に検討する時間的余裕を与えるとともに、その複雑な仕組みや、先物取引の特性(大きな儲けも期待できる代わりに、大きな損失を被る危険もあることや相場の動向を見通すことは至難であること、値動きによっては、追加証拠金を入れなければならない場合があること)などを特に念入りに説明し、かつ、顧客らがこれらのリスクを承知した上で自らの意思と判断で取引をするようにしなければならないのであって、海外先物取引法の定める違法あるいは不当な勧誘や受託、手仕舞拒否の禁止(同法一〇条各号)や顧客の売買指示についての制限等及び国内公設市場を規制する商品取引所法の定める不当勧誘の禁止等(同法九四条一ないし四号)及びこれを受けて定められた商品取引所法施行規則等の委託者保護の法規制の趣旨に反し、これらの点に配慮することなく受託業者のみの利益を企図し、顧客らの意思や判断を形骸化し、その損失を考慮することなく、これを招来させるような勧誘や商法は、社会的な許容の範囲を逸脱する違法なものというべきである。

そこで、さらにオレンジ商品の顧客勧誘の方法や実体について検討することとする。

2  当事者等とオレンジ商品商法の基本的な仕組みについて

(一) オレンジ商品とその代表者ら及び被告泰平商事との関連について

当事者間に争いのない事実と甲一の14、四の1、2、八の1、2、一〇、二二、二七の1ないし4、五一、六五、六六、六九の1ないし5、七〇の1ないし6、乙一、二の各1、2、二九の1、2、三〇ないし三二の各1、2、三六、三八の1、2、四一、四五、四六の1、2、四九の1ないし3、五〇、五五の3、五八の1、2、五九、六〇の1、2、六一ないし六三、七一ないし七五、八八の7、8、八九の1、2、九〇の1ないし3、被告17・Y15、被告泰平商事代表者兼被告3・Y2各本人尋問の結果によれば、以下の事実が認められる。

(1) オレンジ商品は、昭和五九年二月、海外商品先物取引受託業を目的としてカーギル貿易の商号で設立された株式会社で、当初の代表者は被告3・Y2の実父である訴外A1であり、その後、被告3・Y2が代表者となり、更に平成三年四月に被告4・Y1が代表者となった。同社は、平成二年六月に現商号に変更されたが、平成元年度には、毎月約一五〇〇枚から約二五〇〇枚の建玉取引があり、平成二年八月一日には、一日だけでコーヒーについては二二五枚の、ガスオイルについては一〇七枚の取引が行われるなど相当多数回の取引がされており、平成四年頃には顧客は約六〇〇名であり、在籍社員は約八〇名であった。

(2) 被告泰平商事は、昭和六二年六月に海外との貿易業務等を営業目的として設立された会社であり、当初は、被告3・Y2、その実母の訴外A2、被告4・Y1が取締役であり、代表者は被告3・Y2であった。同会社は、その名称自体、被告3・Y2がその長男の名前から命名したものであり、その本社事務所をオレンジ商品と同じビルとしていたこともある上、従業員も名目上の所属は分れているものの、被告泰平商事等からオレンジ商品に出向の身分の者が多数おり、ほとんど区別し難い程に一体となって先物取引業務に従事している。平成四年六月現在では、両社の役員を兼任している者はいないが(監査役は訴外A3が兼任している。)、オレンジ商品の代表者である被告3・Y2が両会社の株式のほとんどを所有しており、同被告が両会社の代表者を兼任していたこともあり(もっとも、現在は、オレンジ商品の代表者は、被告4・Y1になっている。)、被告3・Y2は、オレンジ商品の代表者を退任した後も同社の役員会に出席し、実質上、両会社を経営している。

もともと、被告泰平商事は、オレンジ商品が建てていた自己玉の代行をさせるために設立された会社であり、その業務内容は、オレンジ商品から委託を受けて顧客の売り買いの建玉の差玉(以下「向い玉」という。)を建てるというものであり、GNIに対する被告泰平商事からの建玉もオレンジ商品のファックスを通じて機械的に注文がされており、被告泰平商事はオレンジ商品の一部門ともいえるものである。

オレンジ商品は、顧客から委託注文を受けると、これをロンドンに本社を有するGNIに取次ぎをしている。少なくとも原告らの契約締結と入金のされた平成元年六月頃から以降、被告泰平商事は顧客の建玉の差の向い玉を建てていた(甲一の14、八の1、二七の2)。オレンジ商品および被告泰平商事との関係については、GNIがオレンジ商品および被告泰平商事の注文によりロンドン市場で先物取引等の受託業務を行うが、建玉が同枚数のときは三社間で決済ではしない旨の契約が締結されており、差金等はGNIの都合のいい時期に一方的に通知して清算をすることになっている。

オレンジ商品は、顧客の委託を受け、GNIを通じてロンドン商品取引所において砂糖、ガスオイル、コーヒー、ココア等の商品先物取引を代行しており、オレンジ商品は、注文伝票を業務部で夕方に集計してGNIに顧客の取引を一括して取り次ぎ、GNIがその名で同取引所で先物取引を行なっていた。

(3) オレンジ商品や被告泰平商事は、貸金業やレジャー産業あるいは不動産業を営業目的としている株式会社リエームや株式会社BFI、ヤスタカ産業株式会社、泰平不動産株式会社などの泰平グループの名称で活動しているが、在籍社員は漸次増加しており、平成四年度では関連会社在籍社員が多い状況となっている(なお、リエーム及び泰平不動産の代表者は被告3・Y2の妻A4である。)。

(4) オレンジ商品では、職制上は部長、副部長、課長、係長、主任、副主任及びその下に役職のない営業担当社員が配置されることになっていたが、営業については、営業本部が設けられ、その統括のもとに営業第一店、第二店(その後、第三店も設けられた。)があり、店長(副部長、課長が当てられた。)の指示により店長代理、課責(副主任から係長まで)への指示がされていた。また、副主任の下に営業担当の社員が第一店で六、七名合計一二、三名がいて営業活動に従事しており、顧客への勧誘は、LC事業部からの顧客見込客の名簿を検討して課責の指示により営業担当の社員により行われていた。営業社員は、新入社員の入社直後に二週間程度の研修をし、外務員試験をした後、その合格者を配属していた。

泰平グループでは、毎週土曜日に課責以上による事業部会議が開かれ、各営業セクション別営業報告や決意表明等がされ、毎月一五日にはグループ各社の長、支店長以上の役職者による店長会議が実施され、そのほか理事及び取締役以上が出席する役員会、常務以上の最高幹部による常務会、副部長以上の委員会等が定期的に開かれていた。

(5) 被告3・Y2は、昭和四五年三月、大学を卒業後、朝日物産株式会社(商品仲買人、以下、会社法人については株式会社等を省略することがある。)入社、昭和四九年一二月に同社からサンライズ貿易(昭和四七年に朝日物産から社名変更)グループの一員であるゼネラル貿易に移り、同社で本店長、広島支店長、大坂支店長を勤め、昭和五三年七月に同グループの一つであるオリエント貿易の営業本部長になり、昭和五六年二月、取締役常務を最後に同社を退社した。その後、ファースト貿易を設立し、海外先物取引に転向し、常務、専務を歴任し、昭和五九年二月六日独立してオレンジ商品の前身であるカーギル貿易を設立した。同被告は、泰平グループの常務会や役員会等及び月曜日に副本部長職以上が出席して開かれる月曜会等に出席するとともに、グループの基本方針を審議決定してきた。

被告4・Y1は、昭和四九年四月大学商学部を卒業し、商品先物取引会社であるオリエント貿易に入社、その後退社し、昭和五九年二月オレンジ商品に入社、入社当初は、営業次長であったが、その後、本部長、常務、専務を経て平成三年四月オレンジ商品の代表取締役、社長になった。

被告5・Y3は、商品先物取引会社であるオリエント貿易、ファースト貿易を経て、昭和五九年二月オレンジ商品の創業に参加するとともに同社に入社し、平成元年七月まで営業担当として勤務し、同年八月顧客サービス部の責任者となり、右月曜会にも出席するなど、被告Y2の補佐をしてきた。

被告6・Y4は、大学法学部を卒業、二年間喫茶店を経営していたが、その後、海外先物取引会社である大栄貿易に入社、その後も、ユニバース、ワールドジャパン、中央勧業と海外先物取引の道を歩み、昭和六一年一〇月オレンジ商品に入社、営業課長として、新規委託者の勧誘並びに顧客管理の仕事に従事し、同年八月営業次長に昇格、昭和六三年営業部副部長に昇格、その後、平成元年取締役営業部長に、平成二年には取締役本部長に、翌三年には、取締役常務に昇格した。

被告7・Y5は、昭和六二年九月被告泰平商事に係長として入社、昭和六二年一二月、オレンジ商品へ係長として出向、昭和六三年四月副長、同年一二月課長として顧客の売買管理を行い、平成元年八月次長、平成二年八月副部長、平成三年四月取締役副部長として社員管理全般を行っていたが、同年一〇月中旬に退社した。

(6) 被告8・Y6は、海外先物取引の経験を有していたが、昭和六三年一〇月二七日オレンジ商品に営業社員として入社、平成元年四月主任、同年一二月係長、平成二年八月副長、平成三年八月課長として先物取引の受託業務を行い、同月二〇日退社した。

被告10甲斐は、平成二年三月一日オレンジ商品に入社、同年一二月副主任、平成三年四月主任、同年八月係長、平成四年一二月副長に昇進した。

被告11・Y9は、平成二年三月一〇日オレンジ商品に入社、同年一二月副主任となり、上司は、被告8・Y6、同13・Y11であった。

被告12・Y10は、オレンジ商品の営業社員として勤務していた者であるが、その上司は被告17・Y15であった。

被告13・Y11は、昭和六三年五月八日オレンジ商品に社員として入社、平成元年四月主任、同年八月係長、平成二年四月副長、平成三年八月課長、平成四年一二月次長、その後、BFIの営業に従事している。

被告14・Y12は、それまで海外先物取引の経験はなかったが、平成元年四月二五日オレンジ商品に営業社員として入社、同年八月副主任、同年一二月主任、平成二年八月係長として、海外先物取引の受託業務に従事し、平成三年六月退職した。

被告15Y13も、それまで海外先物取引の経験はなかったが、平成元年六月末日オレンジ商品に営業員として入社、平成二年一二月副主任、平成三年四月主任、同年一二月係長となり、同月末日退職した。

被告17・Y15は、県立高校を中退し、寝具の販売会社に勤務したあと、平成元年三月二八日オレンジ商品に営業副主任として入社、同年八月主任、同年一二月係長、平成二年一二月副長、平成三年八月課長、同年一二月次長、平成四年八月副部長になり、入社以来海外先物取引の受託業務に従事してきた。

(二) 原告ら

別表証拠と甲二四ないし二六、証人A5の証言、原告49・X49、同31・X31、同8・X8、同27・X27各本人尋問の結果によれば、次の事実が認められる。

(1) 原告らは、オレンジ商品の顧客であった者らであって、ほとんどが二〇才代から三〇才代のサラリーマンで、約二〇名は二五才までの者らである(認定した取引時のおおよその年齢は、別紙四「出入金等一覧表」の「原告」欄に記載のとおりである。)。いずれもこれまでに商品先物取引等の経験はないか、乏しく、収入は低い。家庭を持ち、自己の預金を解約したりした者もいるが、投機目的で取引を開始した者がほとんどであり、市中の金融業者(以下「サラ金」という。)から借入れをして委託証拠金を工面し、家族や会社には秘密にして取引を始めた者も多い(自己資金を投じたのは、原告5・X5、原告14・X14、同67・X67、同71・X71らにすぎない。)。

(2) 原告らは、取引対象の商品の値動きや各種の情報は、オレンジ商品の担当社員や電話サービス、一般新聞等で入手するほかなく、オレンジ商品の営業社員からの頻繁な売買の勧誘や催促があれば、これに反論するだけの知識や情報を持っていないために、自然と営業社員の示唆、指示等に従うことになり、特に値動きが予想と異なって取引に損失が出てからは、ほとんど営業社員に反論することができず、その勧めに従って売買をすることとなった(取引状況等の詳細は、後記3認定のとおりである。)。

(三) 委託保証金と手数料

別表証拠と甲五一、乙一の1、2、八の1、2、三五、四一、被告泰平商事代表者兼被告3・Y2本人尋問の結果によれば、次の事実が認められる。

(1) 委託保証金は、委託者が、売買取引をするに際し、担保として受託者に預託しなければならない預け金であり、オレンジ商品では、コーヒー一枚につき一五万円(平成二年二月二八日以前は三〇万円)、ガスオイル一枚につき三〇万円ないし六〇万円を顧客から徴していた。

(2) 先物取引においては、個別取引を仕切ったときは、利益の有無にかかわらず、受託業者に手数料を支払わなければならず、オレンジ商品の場合、取引一枚の手数料は、保証金の一割を超える額であり、たとえば、コーヒー豆一枚一回の売買で二万円(平成二年二月二八日以前は三万八〇〇〇円ないし五万円)であり、ガスオイル一枚一回の売買で四万五〇〇〇円(ただし、昭和六三年一一月三一日以前は五万円、同年一二月一日から平成二年二月二八日までは四万二〇〇〇円、同年三月一日から同年九月二日までは三万円)であり、国内公設の受託業者の手数料の約一〇倍の高額であった。一方、オレンジ商品がGNIに対して支払う手数料額は、明らかではないものの、相当低く、オレンジ商品が顧客から受領する手数料額は、GNIに対して支払う手数料額の一一倍から七倍の程度である。

(3) オレンジ商品では、顧客から預かった委託保証金を泰平グループ内の他社に貸し付け、金融や不動産売買に回して運用し、収益を上げることとしており、一部は教育産業を営業目的とする新会社の設立や海洋レジャー産業のクルーザーのオーナー会員券の販売等に使用されており、また、一部は、社員の沖縄旅行、クルーザーの購入、自社寮の土地購入、リゾートマンションの購入等にも使用されていた。

被告3・Y2は、営業社員に対し、無利子の資金が集められ、その運用如何によっては短期的に会社が発展を遂げることも可能であると述べて社員らを叱咜激励していた。

(4) 本件における原告ら顧客の取引については、オレンジ商品に対し、短期間に多額の委託保証金を入れている者も多い。たとえば、原告26・X26の場合、平成元年七月七日の三〇万円をはじめてとして、同年一〇月一七日までの三か月の間に合計三七一万円もの多額の保証金をオレンジ商品に入れているが、これは同原告が当初から資金として計画していたものではなく、当初の平成元年七月七日の九月限の買玉が値下がりしたところ、オレンジ商品営業社員に売りの両建てを勧められたことによるものであり、オレンジ商品営業社員らは、建玉の値動きがあるつど、両建て等を勧めていた。同原告については、平成元年七月七日から平成二年四月二日までの取引の間に両建て二回、同日売直し・買直し九回、途転一二回の頻繁な売買がされている。

(四) 右(一)ないし(三)のとおり、オレンジ商品は、委託者である原告らの委託を受けて建玉をするのであるから、右受託契約の義務の一内容としてその顧客らに対する信頼を維持し、これに背くべきものではないということができる。しかるところ、オレンジ商品と被告泰平商事が顧客らの建てた玉の差玉分を被告泰平商事名義でいわゆる向い玉として建てていたことは、被告らの自認するところであり、その仕組みは右(一)、(2)のとおりであるところ、かかる向い玉は、原則として顧客の未決済取引の総体に評価損の生じたときはこれと反対の関係に立つ取引業者の未決済取引の総体に評価益が生じる対立関係にあり、相場の変動により顧客が損をすれば業者は利益を得、反対に顧客が利益を得れば業者は損害を被るということができる。もともと、委託を受けた業者において、単なる差玉を建てることは顧客らの値動きへの予測、相場の動向等に反する建玉であり、さらに手仕舞の結果、損失を受ける可能性が大きいといわねばならないのであって、これらの点で顧客と向い玉を建てる業者との利害は原則として相反するものといわねばならない(商品取引所法施行規則三三条二号は、商品取引所法九四条一項四号を受けて「もっぱら投機的利益の追求を目的として、委託に係る取引と対当させて、過大な数量の取引をすること」を禁止行為としているが、これも右のような利害相反の点から委託者保護を定めたものと解されるところである。)。

海外先物取引市場において、同一の業者が買いと売りの双方を取り引きする場合、損失に備えた担保として入れる証拠金は、減免されるところ、オレンジ商品らにおいても向い玉を建てれば、顧客から預かった証拠金を海外に送金する必要はなく、あるいは送金するにしてもわずかな額で済むことになるのであって(甲三〇、被告泰平商事代表者兼被告3・Y2本人)、このような向い玉を前提としたGNIとの取引形態等に照らすと、オレンジ商品や被告泰平商事において、顧客らよりも多い情報量を駆使して、またロンドン市場等の相場動向については真実の情報を流しつつもその後の売買は顧客らの思惑によるのであるから、これを操縦して自己玉による取引益及び手数料を稼ごうとするのは避けられないところであり(被告らは平成五年一〇月一二日付け準備書面において乙八九の1、2、九〇の1ないし3のとおり、泰平グループ全体で平成二年度で一億二〇〇〇万円、平成四年度で七一三〇万円の差損があり、平成三年度は一億一三〇〇万円の差益があったと主張し、被告3・Y2は、陳述書(乙六五)で、被告泰平商事の自己玉による損失は、平成四年度で八〇〇〇万円であったと述べている。)、オレンジ商品商法は、正常な受託の業務を妨げる仕組みを前提とした商法といわざるを得ないところである。

被告らは右(一)のとおり、いずれも海外先物取引に精通し、一方、原告らは先物取引に関する手引等により説明を受けたものの、かかる保証金流用の仕組み自体知るところではなく、被告らからすれば、前記取引関係書類の交付等による委託者保護の規定(海外先物取引法八条等)もこれを形骸化することは容易といえるのであり、被告ら主張のオレンジ商品の商法は、委託の趣旨や善管注意義務に反するとの推認を免れないものである。

(五) 被告らは、「被告泰平商事は別の会社法人であり、同会社は差玉の建てにより損失を被っており、その経営は赤字であり、このことは被告らが向い玉による利益獲得を意図していないことの証左である。」「向い玉は建玉総数の約一割であり、市場の冷やした玉としての効果もあり、許容されている。」「オレンジ商品の受託手数料が高いとはいえない。」などと主張するが、被告泰平商事の名称自体、被告Y2が長男の名前からとったものであり、その事務所はオレンジ商品と同じビルであったこともあり、両社は被告3・Y2が経営し、これら泰平グループの従業員も区別し難い程である(被告17・Y15本人は、ヤスタカ産業から出向していると供述する一方、その代表者が誰であるかも供述できない。)上、もともと被告泰平商事の業務もオレンジ商品が受託した建玉の差玉向いとして建てることを内容としており、そのGNIに対する委託自体がオレンジ商品のフアックスにより送信されているものである。前記のとおり、先物取引が経済動向等の諸要因により変化する市場経済を把握し、その将来を予測するものであることに照らすと、およそ単に顧客らの建てた差玉を建てることにより利益、業績を上げ得るとは考え難いところであり、かかる業務のみをもって営業をし、存続し得る会社があるとはいえないのであって、同社に他に利益を上げ得る程の業務があると認めるべき証拠はなく、会社としての経営の維持が成り立つとすれば、向い玉を建てることによるオレンジ商品からの受託業務による収入によるというほかはなく、この点でもオレンジ商品と被告泰平商事は共同して受託業務を営んでいるといわねばならないところである。

また、向い玉に市場の鎮静化の効用があるとしても、顧客は自らの建玉により市場の値動きがあることを期待して投資をするのであり、売玉、買玉を意図的に同数とすることは委任をする顧客らの信頼に背くというべきであり、オレンジ商品らの向い玉の割合は必ずしも明らかではないが、被告3・Y2の陳述書(乙四一)では、委託総建玉数の約三割というのであり、甲二七の1ないし4と被告泰平商事代表者兼被告3・Y2本人尋問の結果によれば、平成元年七月七日受託分については、、銘柄により差があるものの、全銘柄についてオレンジ商品が受託したコーヒー豆七月限買い一二枚について被告泰平商事は同枚数を建て、コーヒー豆九月限買い一〇枚、売り二一枚の差である一一枚について被告泰平商事が買い一〇枚を建てるなどしており、オレンジ商品の同日の受託総数は、売り一〇九枚、買い一三〇枚合計二三九枚であるところ、被告泰平商事は合計売り七九枚、買い五八枚合計一三七枚を建てていることが認められ、半数を超える差玉を建てているのであって、仕切分が含まれることを考慮しても相当の数であり、前記商品取引所法施行規則三三条の禁止する「過大な数量」の向い玉に該当すると認めるのが相当である。

さらに手数料額の点をみても、確かに海外先物取引の受託、取次ぎであり、手数料は、仕切分を含めてのものではあるが、オレンジ商品がGNIに支払う額の一〇倍程度であって、相当の高額ということができ、顧客は、先物取引により利益を得るとすれば、このような保証金の約一割を上回る高額の手数料を支払い、その上に保証金をサラ金から借り入れている場合には、その利息を加えた額を上回る取引利益を得なければならないのであるから、容易ではなく、全国の商品取引所が昭和四八年に定めた「商品取引員の受託業務に関する取引所指示事項5」が「委託者に融資の斡旋を約して勧誘を行い、あるいは売買取引を継続させること」を禁止している(甲二八)のも、委託者の損失の拡大を防ぐ趣旨にあると解されるところである。また、オレンジ商品は、保証金の他の関連会社への貸付け等による運用を図っているが、預託した保証金が向い玉を建てることによって、オレンジ商品に留保された結果であることが明らかであれば、顧客らは取引契約の締結や取引の続行を躊躇するはずであって、この点でも被告らの商法は、委託の趣旨に反した商法といわねばならない。

以上のとおりであって、オレンジ商品らの向い玉が一般的な商法で、何らの違法性がないとの被告らの主張はいずれも採用することができない。

3  オレンジ商品営業社員らの顧客の勧誘等とその後の取引の実体等について

(一) 原告らに対する勧誘と契約締結の状況等について

(1) 前掲一、1、(一)の各証拠と甲二四ないし二六、四四ないし四七の各1、2、五一、六一の1ないし4、証人A5の証言、原告49・X49、同31・X31、同8・X8、同27・X27各本人尋問の結果及び被告17・Y15本人尋問の結果によれば、次の事実が認められる。

① オレンジ商品においては、まず内勤の女子事務職員において顧客に対し、高額所得者名簿や高校卒業生名簿等の各種名簿等により先物取引に興味があるかの調査を行うこととされている。調査方法は、電話によるアンケート形式がとられ、面談の約束をして営業社員が赴き、初めて原告ら顧客に会い、前記一、1、(一)の海外先物取引の仕組み等を記載した書類等を示して内容等を説明しながらも「確実に利益が出ます。」「一か月ほどで一五パーセントの利益が出るのでそこで清算して、また新しく玉を建てて利益が乗ったら清算するのを繰り返していけば、最初の金はすぐ戻ってくる。」「顧客が多いから注文ができるか分らない。」などと最初は堅実な投資で、他からの注文が多いかのごとく申し向けて顧客を安心させ、顧客において購入意欲があることを示すや、「コーヒー豆は労働者のストがあり、必ず相場が上がるから絶対儲かる。」「中東の情勢から、必ずガスオイルが暴騰するから絶対儲かる。」「絶対儲かるからとにかく任せてくれ。」等と更に意欲をそそり、顧客の気持ちが契約申込みに傾くとオレンジ商品の事務所に電話したとして席に戻り、「希望者が多くてなかなか注文がとれなかった。」「やっとコードがとれました。」(コードナンバーの点については、甲二の6、24、29、34、51、54、61、六七の5)とまるで取引できる地位の取得自体が難しく、ようやく確保できたかのごとく装い、また、得難い利殖の機会をものにしたとの気持ちにさせ、その後に取引契約書を取り交わし、保証金を入金させるなどした。

② 原告らのほとんどは、証拠金の工面をサラ金等からの借入れによってしているが(原告らのうち、自己資金等を投じているのは前記のとおり四名にすぎない。)、最初は少額であったものの、両建てを勧められ、保証金の捻出のために更にサラ金から借入れをし、その結果、極めて多額の借入れをしている結果となった者が多い。取引により損失となってからは利益を得るよりもこれを回復し、あるいは取り戻すための取引であり、やむなく継続することとなっている。一方、当初の建玉により差益を得た者は保証金に組み入れて建玉を増やすことを勧められ、リスクが大となることに注意が向かないまま、多数回の売買を繰り返し、その結果、損失となり、委託保証金も失う結果となっている。オレンジ商品の営業社員は、原告らの金策状況等を知りながら、サラ金業者からの借入れを示唆し、執ように保証金名目での金員の納入を求めたため、更に多額の借入れと損失を被り、原告らの中には勤め先を辞め、退職金をサラ金への返済の一部に当てたり、自己が有する車等を処分したり、結婚を延期せざるを得なくなったりした者もいる。

(2) 営業社員の原告ら顧客に対する勧誘と契約締結の方法等は様々であるが、被告らは、「原告らは各取引に同意、承諾していたもので、被告らが原告らをサラ金に連れ回したり、借入れを示唆したりしたことはない。」と主張し、確かに、被告17・Y15本人尋問の結果によれば、原告13・X13のように頻繁に売買を繰り返し、同原告自身がオレンジ商品営業所に出向いて取引をしたこともあった事例もあることが認められるものの、原告ら顧客に対するオレンジ商品の取引契約の勧誘と契約締結後の後の取引方法等についてみれば、次の事実が認められる。

① 原告1・X1についてみると、別表証拠によれば、同原告は、二一才の会社員であるが、平成二年一一月末頃にオレンジ商品から同原告の出身高校の卒業生に電話しているとして勧誘され、面談を求められたこと、同年一二月三日にオレンジ商品の営業社員から「コーヒー豆の取引は、絶対儲かる。私が保障します。お金ならカード会社が貸してくれます。」などとの説明のもとに勧誘され、その際、同日付けの売買取引契約書(乙個一の1)に署名指印をしたところ、その翌四日、被告8・Y6において来社するよう求め、面談に赴いた同原告に対し、再度勧誘して説明書を徴し、その際にコーヒー豆が上がっていると説明して保証金三〇万円を工面させてコーヒー豆五月限の買い二枚を建てさせ、その後値動きがあるや、同原告に電話して早急の対処を迫られているかとのごとく説明して両建てを勧めてこれを承諾させ、同月一九日にコーヒー豆一一月限二枚の売りの両建てをさせ、その後、一月初旬は、五月限は値がやや上がりつつあり、一方、一一月限はほとんど値が動かないのに、両建ての決済とガスオイルへの移行を勧め、その結果、一月八日にガスオイル五月限の売建て一枚とさせたこと、その後の一〇日間で追加保証金を求められる程に値が下がり、同原告は、手仕舞を求めたものの、オレンジ商品では言を左右にして応じず、やむなく同原告は、勤務先の上司や弁護士と相談し、弁護士を通じてオレンジ商品側に取引の終了を求めたこと、同原告のオレンジ商品に入れていた保証金の合計は、八〇万円で、清算金は一六万五七五五円であり、その間の手数料合計は一二万五〇〇〇円であったことが認められる(その余の原告らについても別紙四「出入金等一覧表」の「証拠」欄記載のとおりの各証拠によれば、同表記載のとおりの出入金の事実が認められる。なお、原告ら主張と認定が一部異なることは同表に記入のとおりである。)。

同原告は二一才であり、投資等のための余裕資金等があるはずもなく、同原告が先物取引に詳しいともみられないのに、契約書の取り交わしがされた翌日には建玉がされているのであって、海外先物取引法八条が「契約締結日から一四日を経過した日以後での売買の指示」を義務付け、委託者の保護を図っているのに反する上、被告8・Y6は、取引開始から間のない同年一二月一九日には売りの両建てを勧めており(同日の売建ての注文伝票(乙個一の7の2)には、「はい、分かりました。明日訪問して詳しい説明を聞きますのでよろしくお願いします。」との記載があり、同被告が勧めた点については、同原告の陳述書(甲二の1)とも符合する。)、同被告がその陳述書(乙七三)でも両建てを常に肯定する立場を述べていることに照らすと、これらの建玉は、同原告が自らしたとはいえないものがある。

② 原告2・X2について、別表証拠および当裁判所の北九州市消費生活センターに対する調査嘱託の結果を検討すると、同原告は、三一才の自衛隊員であるが、平成二年八月初旬に「出身高校の卒業生に電話している。」として連絡を受け、八月二日に訴外A6から勧誘を受けて売買取引書に署名等をしたこと、その後被告8・Y6から面談を求められ、「コーヒーが二枚建っている。」「入金しても解約してもよい。」などと言われ、証拠金三〇万円を工面したこと、同原告の委託者別委託保証金現在高帳(以下、同帳を「現在高帳」という。)によれば、同原告は、同月二〇日、コーヒー豆の一一月限の買い二枚を建てたが、同月二四日に七月限の売り二枚の両建てとし、更に二八日に三月限の売り二枚を建て、九月一七日に一月限の買い、売り各二枚を仕切り、一月限の売り四枚を建て、一〇月二三日に仕切って九月限の売り六枚とし、その後、一一月一四日、七月限への移行をしたこと、この間売買差益も出ていたが、この利益分を保証金に組み入れて枚数を増やしたこと、その後売買差損が出たので、同原告は取引を止める旨の意思表示をしたが、オレンジ商品の担当営業社員は、言を左右にして応じなかったので、同原告は、市の消費生活センターに電話し、さらに消費者弁護団を通じてようやく手仕舞ができるに至ったことが認められる。

なお、同原告の陳述書(甲二の2)では、「取引契約書に署名した後にコーヒー豆二枚が建っているので、三〇万円用意してくれと言われ、被告8・Y6から八月一九日に入金してすぐに解約してよいと言われ、おかしいと思ったが、三〇万円を八月二〇日に入れた。その後に六〇万円を入金した。」旨の陳述内容となっているところ、被告8・Y6は、その陳述書(乙七三)では、「説明をして保証金三〇万円は八月二〇日に振り込まれた。」旨の説明をしているが、現在高帳(甲一の2、乙個二の10)には、八月七日に三〇万円の入金がされた記載となっており、入金の経過自体に疑問があるものの、勧誘の経緯等は前記のとおりと認めるのが相当である。

③ 原告3・X3については、別表証拠と乙八三によれば、同原告は、一〇月二五日オレンジ商品の営業社員である訴外A7に「今買えば、確実に儲かる。申込みが殺到しているので、誰でも買えるわけではない。買えるかどうか会社に電話してみますので買えればやってみませんか。」「五枚だけ買えました。」と勧められ、半ば契約するしかない立場となって取引契約書に押捺し、取引を開始して売買を繰り返したこと、差し入れた保証金の合計は一九〇万円で、売買差益もあったものの、手数料の合計は一七五万円余であり、ほとんどが手数料として徴収されることとなったこと、同原告は、オレンジ商品本社を訪問して委託の手続をしたものの、その後の取引のほとんどは、オレンジ商品営業社員が同原告に電話して勧め、示唆していたことが認められる。

被告らは、同原告の建てや仕切り等は同原告の利益となる建玉であり、同原告の自由な意思によるかのごとく主張するが、同原告の陳述書(甲二の3)では、「自分から売買を指示したことはなく、担当者からの指示に従っていた。」となっているところ、オレンジ商品代表者兼被告3・Y2作成名義の同原告に関する売買取引状況報告書(乙五六の1)によっても最初の値下がりによる売建ての仕切りは、オレンジ商品営業社員の訴外A8において同原告に連絡をし、了承を求めたというのであり、その後の注文伝票(乙個三の7の1ないし51)の書込記載等は、同原告の判断による売買というよりも、オレンジ商品社員の操作による売買を裏付けていると評価するのが相当であり、その後の売建ても営業社員においてその情報等を提供して建て玉を勧めるなどしており、同原告がこれを拒否する情報はなく、また損失を受けている同原告においてこれに従うほかはなかったのであり、同原告が個別の取引を了承したのも営業社員らの誘導によると認めるのが相当である。

④ 原告4・X4についてみると、別表証拠によれば、同原告は、二四才の会社員であるが、電話による勧誘を受けた後、訴外A9から面談を求められ、同人から「湾岸戦争でガスオイルは必ず上がる。」などと申し向けられ、平成二年一〇月一〇日に取引契約書を取り交し、同月一一日に一月限買い一枚を建て、値下がりしたため、更に買い一枚を建てたこと、最初の九〇万円の保証金はサラ金から借入れをしてオレンジ商品の営業所に持参したこと、同原告は、同月一八日に二月限の買い一枚を建て、翌一九日には両建てとして売り三枚(一二月限)を建てるなどし、さらに平成三年一月にコーヒー豆に替えるなどして損失のまま取引を終了したが、その間の両建てはいずれも営業社員の示唆等によるものであったことが認められる。

被告らでは、平成二年一〇月一一日付けの訪問者カード(乙個四の11)のように、同原告ら顧客を来社させて建て玉をさせている場合もみられるが、顧客らがクーリングオフの期間の適用はないとの明確な認識を持って来社したかは疑わしく、同期間を潜脱するために敢えて来社させていたとの疑いを払拭することができない。

⑤ 原告5・X5について別表証拠をみると、同原告は、平成二年八月二四日に被告10甲斐と面談してガスオイルの購入を勧誘され、取引契約書を取り交わしたこと、同原告の現在高帳(乙個五の10)には八月二八日に保証金九〇万円の入金(同原告は自己の預金を解約するなどして保証金としている。)がされ、九月一〇日に一二月限の買建て三枚がされ、九月一八日に仕切って二月限の売建てがされているほか、九月二一日には二〇〇万円、九月二五日には二五〇万円を入れるなど積極的に取引をしたこと、この間、二三五万円の売買差益も生じたが、オレンジ商品ではこれを保証金に入れさせ、同年一〇月二四日にさらに二二五万円の保証金を入れさせて取引枠を拡大させて継続させたが、同原告は結局は売買差損と手数料の増加により損失となったことが認められる。

被告らは、「最初の入金のときに注文して建てられたはずであるのに、現在高帳では九月一〇日になっており、食い違いがある。」との同原告作成の陳述書の内容について虚偽を述べたものと主張し、確かに取引内容を記載した委託報告書等が同原告のもとに送付されているが、後記⑪の録音テープでは、オレンジ商品の社員は注文後の買い玉価格の問い合せに対し「一週間してからでないと分からない。」などの虚偽の回答をしており、かかる回答は、営業社員らが意を通じて組織的にしているとしか解されないことに照らすと、右原告5・X5の陳述書の内容もにわかには否定し難いといわねばならない。

⑥ 原告10・X10についてみると、別表証拠によれば、同原告は、オレンジ商品の営業社員から「申し込んでも買えるか分からない。」などと言われて平成二年八月七日に取引契約書を取り交わし、同月九日に九〇万円を入金し、ガスオイル二月限三枚の買いを建て、八月二八日に差損のあるまま仕切って一月限四枚の買いを建て、翌二九日に一二月限四枚の売りの両建てをしたりしたが、値下がりし始めたため、追加保証金一五〇万円を入れたこと、売建て四枚はその後一〇月八日に二枚、同月二六日に二枚を仕切るなどしたものの、差損が大きく、結局は帳尻上も二五万円の損となったことが認められる。

⑦ 原告30・X30についてみると、別表証拠によれば、同原告は、二一才の会社員であるが、訴外A10に「ガスオイルが上がっている途中だ。下がったときは、買いを仕切って売りを建てればよい。自分達が専門の判断でうまくやるから心配はない。」などと言われてガスオイルを勧められ、平成二年九月一三日に取引契約書を取り交したこと、その際もA10から「もうコードをとったので止められない。やめるとすれば、今からとにかく入金して仕切るしかない。」と言われ、やむなく、三月限一枚を建てたこととなったこと、その後、値下がりしたところ、「値が下がった。両建てしないと追証がかかる。」と言われ、前に入れた保証金が無駄になるかのような口ぶりで両建てを勧められ、一〇月一日に買い一枚を、二日に売り二枚の両建てをして三日に九〇万円を入れたこと、その後、同原告は、手仕舞を求めたが、オレンジ商品では「担当者がいない。」などの回答をして応じないままであり、その後の清算金も長く支払をしないままであったことが認められる。

⑧ 原告50・X50についてみると、別表証拠によれば、同原告は二六才の会社員であるが、平成二年六月一一日、被告14・Y12から「コーヒー豆が上がる。取引が取れるかは分からない。会社に連絡して取れたら契約して下さい。」「何とか取れました。明日、契約書を取り交わしましょう。」などと勧誘を受け、同日取引契約書に指印をしたところ、翌一一日に被告15・Y13に呼び出され、確認書に押捺し、翌一二日にコーヒー豆二枚分の保証金として三〇万円を入金したこと、その後「値下がりしているので両建てをしなければなりません。二枚分の三〇万円を入れて下さい。」などと両建てを勧められてこれに応じたが、その後の取引も被告15・Y13や同12・Y10において「移行しましょう。」「途転します。」などの示唆唆をして勧めたものであることが認められる。

⑨ 原告70・X70についてみると、別表証拠と甲二四ないし二六によれば、同原告は、二三才の会社員であったが、訴外A12から面談を求められ、勧誘を受けたこと、同人は「希望者が多く、取れるかどうか分からない。」などと取引自体に一定の資格が必要であるかのごとく申し向け、オレンジ商品の営業所に電話した後、「ようやく取れました。せっかく取れたから前向きで考えて欲しい。」などと半ば建て玉をしたかのごとく申し向けて契約をさせて取引を開始させたこと、その後、同原告には、平成三年一二月四日現在でココアの買い四枚が建てられていたところ、被告13・Y11は同原告に売り四枚の両建てを勧め、その保証金を入れるよう求め、営業社員である訴外A11に市内の金融業者に同道して借入れをして金策させるよう指示をしたこと、同原告は、平成三年一二月五日にA11の勧めるまま同人と市内の金融業者営業所に赴いたものの、気が進まなかったため、金融業者に対し、借りることができない旨の証明を求めたりしたので、不審に思った業者側が本件訴訟代理人弁護士平田広志に連絡し、これにより同営業所にかけつけた同弁護士に対し、右A11は、同原告を金融業者に同道したのは、上司の指示によるものであるとの弁解をしていたことが認められる。

右A11作成名義の陳述書(乙六四)には、原告70・X70が積極的に金融業者に赴いたのでこれに同道したにすぎず、自分一存でしたとの部分があるが、一方では、同原告が印鑑を所持していなかったので購入して与えたと積極的に行動したことを認めていること、また、一二月五日の両建ての承諾は、上司である課長被告13・Y11がしたものであるとの記載部分があることに照らすと、右A11の陳述書中の右認定に反する部分は、到底これを措信することができないところである。

右のとおりであって、もともと同原告は、サラ金からの借入れもあり、これを返済するために、本件取引を始めたのではないかと推認される部分もあるが、担当のA11らもこれを半ば知って金策をさせていたと認めるのが相当である。

⑩ 原告8・X8についてみると、別表証拠によれば、平成二年一一月八日頃に被告10甲斐において取引契約書等に署名をさせたこと、「ともかくガスオイルの買いを入れさせて欲しい。」「金融業者を紹介する。一週間で終われば大したことないです。」などと借入れがすぐ返済できるかのごとく申し向け、その後もガスオイルが値上がりしているなどと堅実な利殖の機会であるかのごとく申し向けて市内の金融業者から借入れをさせ、翌一六日に保証金を徴し、その後にガスオイルの買い建て二枚をし、取引から抜けることがないようにし、当初買いの値上りにより利益が出て頻繁に売買をさせたものの、これを保証金に振替えさせて取引額を大きくさせて継続させ、その結果、損失となったことが認められる。

⑪ 訴外A13についてみると、甲四七の1、2と検証の結果によれば、同人は、オレンジ商品の営業社員から「必ず儲かる。」「一〇枚手配しても一枚から二枚しかとれないので一〇枚手配する。」との説明を受けて取引契約書を取り交わし、翌日に「九枚とれたのでその保証金を入れて欲しい。」と予想外の多量の取引枚数の保証金の入金を求められ、これを断わったところ、オレンジ商品の営業社員である訴外A17において七枚負担するから二枚分は必ず入れるように求められ、結局四〇万円の保証金をオレンジ商品に入金したこと、しかし、不安になったA13は、本件訴訟代理人である弁護士久保井摂に相談し、その指示を受けて電話内容を録音することにし、平成三年一二月一六日オレンジ商品の訴外A18、同A17及び被告17・Y15に電話をしたところ、同人らは取引の経過の概略を認めた上、さらに応対したA18は、「買い玉の値段は一週間後にしか判明しない。七枚をA17の方でみている。注文の控えも渡せない。売りにも出せない。」との虚偽の回答をしたことが認められる。

(3) 以上認定の(1)(2)の事実を総合すると、被告らの営業社員らは、ほとんど二〇ないし三〇才代である原告らに対し、「コーヒーは上がる。」「ガスオイルは必ず暴騰するから絶対儲かる。」などと利益が確実であるかのごとく申し向けており、「コードが取れました。」との言も利益が確実に取得でき得るかのごとく錯覚させるものであり、いずれも建玉による利益が確実であるかのごとき言辞として海外先物取引法一〇条一項の「顧客に対し、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供して海外先物契約の締結または顧客の売買指示について勧誘すること」を禁止しているのに反するというべきである。また、同法八条は、「海外商品取引業者は、海外先物契約を締結した日から一四日を経過した日以後でなければ、当該海外先物契約に基づく顧客の売買指示を受けてはならない。ただし、海外商品取引業者の事業所においてした顧客の売買指示についてはこのかぎりでない。」と定め、これは海外先物取引の投機性の大きいことに鑑み、特に取引開始に当たり慎重な判断を求めて委託者の保護を図る趣旨であるのに、オレンジ商品ではこの点の十分な知識、認識のない原告らをことさらに本社営業所に呼び出し、あるいは保証金を持参させるなどし、交付した書類等について詳細に検討する時間的余裕を与えることなく、建玉をさせているのであって、同条の定める委託者保護の趣旨を潜脱し、あるいは保証金の持つ過当な投機抑制の機能を形骸化させる意図のもとに勧誘をしていたといわねばならないところである。

オレンジ商品の原告ら顧客との接触、勧誘とその後の対応等をみると、取引契約の締結と一回目の建て玉は、原告らの意思を尊重する形をとりつつも、値が下がってくるなどするや、損失回避のためと称して両建てを執ように勧めており、当初に顧客らに交付する確認書等の書面は、取引が堅実なものであるかのごとく信じさせる偽装の一環とも評価し得るところである。

(4) この点、被告らは、「勧誘に際し、絶対儲かるなどの断定的文言を用いてはいないし、様々な資料を原告らに与え、取引契約締結の際には、リスク開示書に署名を受けており、原告ら自身の自由な意思に基づいて契約を締結していた。原告らの陳述書の内容は信頼できない。また、仮に営業社員が行過ぎの言動等があったとしても個々の営業社員の勧誘行為の問題であり、オレンジ商品社内では、禁止されていた。」などと主張し、確かに原告らの中には、サラ金から借入れをしている者が多く、もともとは自ら借入れをしていたためにその返済資金を捻出するために本件先物取引の勧誘に応じたのではないかと推認される者やあるいは契約後、積極的に取引に関与した者もいることがうかがわれ、多くの原告作成名義の陳述書は定型書式に書き込む形のものであるが、これらの断定的言辞が頻繁に用いられていたことは、前記2、⑪の録音テープ等のほか、甲六六と当裁判所の福岡県、福岡市、北九州市の消費生活センターに対する調査嘱託の結果によれば、昭和六二年ころからオレンジ商品の勧誘等については同センター等に対する苦情等が相次いだこと、九州、山口各県の同センター等に対する苦情・相談件数は、平成元年度で五〇〇件、平成二年度で五三〇件、平成三年度で七二〇件、平成三年度で七八〇件にのぼっており、対象者は本件と同様にほとんどが二〇才代の給与生活者であり、その内容は「①先物取引の説明を受けてとりあえず発注書にサインするよう催促され、契約ではないと説明されたので、署名押印した。夕方五万円を内金として支払う約束をしたが、本当に契約ではないのか。②借金して取引をしていたが、これ以上借入れできないと断ったが、決済してくれない。③株より確かと勧められた。顧客カードに署名して欲しい、売買は関係ないと言われて署名したが、よく見ると売買契約書だった。④職場に何度も電話があり、コーヒー豆相場の申込みをしたところ、翌日に電話があり、書類をみてくれと言われ、事務所に行き、書類にサインした。翌日に六〇万円を振込むように求められ、解約を申し出たが、違約金を請求された。⑤二枚買いの注文をしたというので勝手なことをしては困ると言っている。⑥喫茶店で話を聞き、断ったところ、子供の使いではない、冷やかしに来たのかと言われ、契約書に署名した。⑦夜に他の従業員から解約するならこちらも何をするかわからないと言われた。」などであり、本件と同様に、「①コードナンバーを確保した、正式登録が終了したので取引を開始するなどの勧誘をめぐるトラブル、②オレンジ商品から紹介された貸金業者、サラ金からの借入れの強要等の苦情、③クーリングオフの説明がなく、その期間に解約を申し出たが応じない事例、④解約の拒否、清算金の支払遅滞」などに類別できるもので、本件の原告らの陳述書の内容と酷似するものもあることが認められる上、また、オレンジ商品内での平成元年六月三〇日付け臨時役員会通達(乙二八の1)、平成二年三月一日付け、同年九月一八日付けのサービス部通達(乙三八の3、2)において「顧客にクレジット会社の斡旋、同行はしない。二五歳までの新規建玉は一枚までとする。」「二五歳までの新規建玉は三〇万円までとする。」「コードナンバーを登録したからキャンセルできないなどの言動を厳禁する。」などの記載があることも原告らの陳述書のような勧誘がされていた事実を裏付けるものということができる。

以上のとおりであって、被告営業社員らは、原告らが先物取引について知識が乏しいことから、当初は、簡単な説明をし、その場で署名指印をさせて取引契約書のみを取り交わし、その後にさらに面談を求め、利益が確実であるかのごとく申し向けて説得し、あるいは「コードがとれました。」などと取引資格をようやく取得できたかのごとき言動のもとに、まるで利益が確保されたかのごとく装い、信用させて建玉をさせ、差損が生じたときはこれを取り戻させるとして、差益が生じたときはさらに取引を継続、拡大させて、いずれも結局は損失の結果を招来させたと認めるのが相当である。

なお、右原告70・X70の件については、オレンジ商品の社内では被告13・Y11や訴外A11に対し、顛末書や始末書、社長通達(乙五一の1ないし4)により社内処分をしたこととされているが、本件訴訟提起後であり、訴訟等を意識してされたものと解され、被告らの主張を裏付けるものとまで評価することはできない。

(二) 建玉の回数と両建その他の取引について

(1) 別表証拠によれば、原告らの取引状況等について次のとおり認められる。

① 原告らの取引において、両建て(たとえば買い注文している場合に、更に売り注文をして、同時期に売りの玉と買いの玉が建てられている状態にすること)は、取引開始日からほとんどが二五日以内に行われ、平均一〇日以内であり、八名のものについては翌日には両建てがされている。原告らの建玉は、売りから開始されたものは少なく、ほとんどは買いによりされ、価格については指し値ではなく、成行きによる注文がされている。

その後の原告らの取引内容をみても、注文に対し、すべて途転(相場の基調が転換しそうな時、それまでの建玉をすべて決済して、同時に今までと逆の新規建玉を行うこと、たとえば、買いを転売して逆に売りを建てること)がなされて、売直し・買直し(限月移行、たとえば、買いを仕切処分して、同時に限月の異なる買いを建てること)がされ、その後に短期間のうちに各取引について仕切りがされている。中には、(一)、(2)、⑩の原告8・X8のように同日両建て、同日切り(甲三の8のA25o.9とA25o.10、両建ても同じ日に建てて、その後同じ日に切ってしまうこと)がされるなど理解し難いものもある。

② 先物取引の売買は、将来値上がりを予想した時は、買建てをなし、反対に将来値下がりを予想した時は、売建てをなすものであり、両建てとは、値動きが思惑と異なった時、証拠金を追加せずにすむように、売り・買い両方の建玉をもつことであり、値動きの方向性を見極めるまでのテクニックと言われている(甲三〇、乙四、八の2)。また、「ころがし」とは、委託手数料を稼ぐために受託会社ができるだけ頻繁に顧客に多量の無意味な取引をさせることであるが、両建てとこれに伴う各取引が行われると、その分だけ取引の回数が増えるのであるから、手数料がそれだけ増すことになり、無駄な取引を繰り返せば、委託者の犠牲の下に受託会社が手数料を自己のものにできることになる。

オレンジ商品の場合、先物取引について関心を有し、主体性を持って建玉をしていた顧客も存在していたと推認されるから、売買の建玉の配分にある程度のばらつきがあり得るとしても、一人の顧客に対し、数名の担当者が担当し、売買を建てるように示唆していたのであるから、取引に際しては、担当者個人の相場観ではなく、会社としての一定の相場観に基づいて建玉がされたはずのものであり、顧客が両建て、途転等を行うについては、それぞれの機能を生かした建て方がされたはずである。

しかるところ、原告ら顧客の取引について、両建てが行われていること、途転が行われていること、売直し・買直しが行われていること、仕切りが行われていることは、前記①のとおりであるところ、平成二年一一月一二日から平成三年一月一一日までの間に原告らに関し、オレンジ商品の取り扱ったガスオイルの取引状況、両建て、途転、売直し・買直し(限月移行)の枚数等は、別紙五「取引一覧表」であり、その値動きは別紙六「値動き一覧表」のとおりであることが認められ、同取引一覧表の取引合計三〇以上についてみるに、多数の建て玉がされた日の売りと買いの枚数を単純比較すると、平成二年一一月二七日は売り二九枚対買い三五枚、一二月七日二〇枚対一八枚、同月一一日一八枚対一四枚、同月一九日一三枚対一四枚、同月二七日一四枚対一五枚、平成三年一月七日二一枚対一七枚、同月一〇日二八枚対二七枚であり、これらはいずれも前日の値動きが激しかったことによるもので、限月の点を捨象したものであるが、売買枚数に差がないのは通常の相場の取引状況とは異なるものではないかと疑われるところである。その余の建て玉数を比較検討しても、値動きに関係なくほぼ売り、買い双方同数、またはわずかの差玉を建てれば、ほぼ同数の取引関係になるから、ほぼ常時両建てが行われていること、頻繁に途転、買直し・売直しが行われていることや差玉も含め、ほとんど先物取引の専門家たるオレンジ商品の従業員らによる示唆、指示による売買、運用がされていたといえることも考え合わせると、両建て、途転等について、原告ら顧客のための本来の機能を企図した建玉がされたかは極めて疑問であり、相場の動向や顧客の利益は二の次として、向い玉をより少なくするために、また単に手数料をより多く徴収するために、前記商品取引所指示事項7(甲二八)の禁止する「無意味な反覆売買(ころがし)」を勧め、原告ら顧客の建玉を操作していたと疑われてもやむを得ないものがある。

(2) これらの取引に関して、被告らは、「両建ては損失の拡大を防ぐ機能とそれまでの利益を確保する機能を有する建玉であり、営業社員らの説明に原告らは納得して売買をしたものである。また、両建てや途転等はいずれも取引をしている者の思惑に基づいているから無意味なものではない。」と主張する。

しかし、別表証拠中の原告らの注文伝票等(乙個七の1等)の余白に営業社員が記入した顧客らとの通話内容を検討しても、原告らが自ら架電して売り・買い、仕切りを指示したというよりも、「ほとんどオレンジ商品の営業社員らの示唆、勧誘に従っていた。」旨の原告らの陳述書の内容をかえって裏付けるもので、商取引における情報の提供の限界を超えていると評価される上、これらの両建てや途転等により、売買差益を上げ得ても、手数料がこれを上回ることが多く、原告らの現在高帳により、その差し入れた保証金額合計に対する手数料割合をみても八割近くであり、一方、売買差益は一割にも満たない程度であることが認められるから、本件先物取引が顧客の利益を企図してされた通常の形態のものとはいえない。

また、原告2・X2、同20・X20、同29・X29、同30・X30、同32・X32、同37・X37、同38・X38、同39・X39、同42・X42、同45・X45、同51・X51、同52・X52、同57・X57、同58・X58、同67・X67、同68・X68らのオレンジ商品に対するアンケート回答の結果(乙個二の11、二〇の11の1、二九の12、三〇の11、三二の12、三七の11、三八の12、三九の11、四二の11、四五の11、五一の12、五七の12の12、五八の11、六七の11、六八の12)を検討しても、同アンケートはいずれも取引開始から相当経過後に回収されたものであるが、オレンジ商品のサービス部の利用もその存在は回答の多くが聞いたことが「ある。」としているものの、その利用はしたことが「ない。」がほとんどであり、営業担当者とのコミュニュケーションは「ない。」「ままあまあ。」であり、テレホンサービスの利用も聞いたことが「ある。」ものの、「一日一回、週に四回」程度が多く、オレンジ商品からの情報の内容は「まあまあわかる」、契約書の内容等は「だいたい理解した」がほとんどである(中には「理解していない」との回答(原告67・X67)もある。)。取引きを始められてどうですかの質問に対しては「おもしろい」に○をしたのは原告20・X20のみであり、「おもしろくない」「わからない」に○をしている者が多い。要望等については「担当者が替るのが多い。早くやめたい。」(原告29・X29)と明確に現在の状況を述べているのもあり、原告42・X42は「相場の変動は営業の人の会話や新聞の一部でしかわからず、先の予想もわからない。会社にすべてを預けているためでもあるだろうが。」と記載しており、原告51・X51は「オレンジ商品について資料がないのでこれから取引きを続けても安心できるものか考えている。営業担当者と一度も会ったことがないし、ほとんど電話もつながらないので困っている。」、原告67・X67は「五〇万円マイナスであるが、その四分の三が手数料であり、手数料を取るために替玉したり、乗り換えしたりするとしか思えない。」などの回答であり、原告らが自らの相場観を持って取引をしていたとは到底いえず、これらは被告らの知悉するところであったということができる。

(3) したがって、原告らの各建玉がその独自の判断に基づくとの被告らの主張は、採用することができない。

(三) 清算の引延ばし

(1) 別表証拠と検証の結果及び当裁判所の福岡県消費生活センター等に対する調査嘱託の結果によれば、次の事実が認められる。

① オレンジ商品の営業担当社員らは、追加証拠金の納入を迫られた原告らや他の顧客らが手仕舞、清算による取引の終了を希望しても、「もっと上がるから今やめたらもったいない。」「これだから素人は困る。利益分でさらに建てなければだめだ。」「今やめることは損が大きくてできません。」「ここでやめるから皆さん損をするんです。ここでこらえなければ儲かりません。」などと述べて原告らの求めを聞き入れず、また、担当の社員を交替させるなどして手仕舞を拒否し、取引を継続させた。

② 原告らの中には、自分で営業社員と交渉しても手仕舞ができないために消費生活センターなどで相談するなどし、弁護士を通じてオレンジ商品側と交渉し、その結果、ようやく清算できた者(原告17・X17、同18・X18、同34・X34、同40・X40、同44・X44同51・X51)らもいる。

(2) この点に関し、被告らは、「原告らの陳述書の内容は信用できない。また、オレンジ商品では、営業社員に対し、顧客とのトラブルのないように指導しており、かかる行為があったとしても個々の社員の一部の問題にすぎない。」と主張する。

しかしながら、右(1)の①②の事実を裏付ける次の事実が認められる。

① たとえば、顧客であった訴外A25のオレンジ商品の担当は被告7・Y5であり、A25は、昭和六三年九月ころ、コーヒーの売り二枚、買い二枚を建てていたが、同人が手仕舞を求めることにして同月二八日に被告7・Y5に全部の決済を求める旨の電話をしたところ、同被告は、了承したかのごとく返事しながら、同月二九日の電話では、同日中に全部落とす旨を約し、更に翌三〇日の電話では全部手仕舞をせずに売りを一枚、買いを二枚落として新たに買い二枚を建てた旨の回答をし、その後も同年一〇月三日の確認に対して「値幅制限で手仕舞ができなかった。」などと虚偽の回答をし、一方では売り一枚を建て、一〇月五日には買いのみの決済を述べてA25の取引を継続させた(甲四四の1、2、四八、検証の結果)。

② 訴外A14は、平成元年一二月現在で、売り二枚、買い二枚の両建てをし、証拠金は二枚分相当額を入れていたが、残りの分の証拠金の工面ができず、結局、本件訴訟代理人らと相談し、オレンジ商品に電話して手仕舞の申入れをしたが、被告8・Y6、同6・Y4らは、入金ができなければ、建玉を処分できないとして決済を拒否して執ように証拠金の捻出を求めたりした(甲四五の1、2、検証の結果)。

③ 訴外A15は、平成元年六月ころ、オレンジ商品との取引を中止すべく、担当の被告8・Y6らにその旨を明らかにして手仕舞を求めていたが、同被告らが言を左右にして応じないため、本件訴訟代理人である弁護士美奈川成章と相談し、同人の立会いのもと、同月九日、オレンジ商品の被告8・Y6に電話して手仕舞を申し入れたが、同被告は担当のY7に相談するよう求めて応じなかったので、A15は更に被告7・Y5に電話し「手仕舞をして戻ることになる六〇万円を借入金の返済のために当てたい。」と述べて手仕舞を求めたが、同被告は、追加証拠金を入れるべき理由もないのに、不足金があるとしてこれを入れるか、ほかには建て玉の二枚のみ決済するしか方法はないと回答して手仕舞を拒否したため、やむなく右美奈川において被告8・Y6らの上司である被告4・Y1に対し、手仕舞の申入れをしてこの実行を確約させた(甲六一の1、2、検証の結果)。

④ 訴外A16は、平成元年七月二一日同様に弁護士美奈川成章の事務所からオレンジ商品の被告14・Y12に電話して、当時の建て玉のままでの手仕舞を求めたが、同被告は言を左右にして応じず、決済時期を延ばすのが同原告のためであるかのごとく述べ、さらに同被告はA19と応対を替わったが、同人に対し、同原告が「サラ金から借入れをしているのでやめたい。会社からも言われている。」などと値洗い損等があってもすべての取引をやめたいと切望したのに、A19も「午後五時の締切時間がすぎたので、売建てなどによる清算ができない。」旨を述べて応じようとしなかったので、やむなく弁護士美奈川において電話を交代し、身分を明らかにして被告4・Y4と交渉し、同原告の手仕舞を約させた(甲六一の3、4、検証の結果)。

⑤ 訴外A20は、オレンジ商品の顧客であったが、平成四年一月現在で買い、売り各九枚の両建てにあり、オレンジ商品の被告12・Y10から追加保証金不足分の五〇万円を入れるよう求められたが、金策ができず、他からの借入れもできないとして損切りのままでの手仕舞を申し入れたが、同被告は、言を左右にして応じないのみか、同原告の実家の電話番号を教えるように求め、入金を強要した(甲四六の1、2、六一の5、検証の結果)。

⑥ 原告11・X11は、オレンジ商品に対し、平成四年一月頃から数回にわたり、手仕舞による清算金の支払を求めていたが、支払はされないままであったので、同年二月二五日に営業部次席である訴外A21に電話して催促したところ、同人は出金や送金の手続が遅れているとして、さらに三月の第一週まで待つように求め、支払を故意に遅延させた(甲六一の6、検証の結果)。

⑦ 訴外A22は、オレンジ商品と取引をしていたが、平成四年五月九日本件訴訟代理人に依頼して手仕舞をし、清算金が八九万円余である旨の取引終了の確認書の送付を受けたものの、その後のオレンジ商品からの振込みは七〇万円のみであった(甲五〇の1ないし3)。

(3) 右(1)、(2)に認定のとおり、オレンジ商品は、原告らからの手仕舞、清算の求めに対し、言を左右にし、担当の営業社員を交替させるなどして、これを引き延ばし、応じようとはしなかったのであって、各顧客らからの電話の問い合せなどは不断にあるものであるから、オレンジ商品では会社として統一した応対をしていたはずであり、また、被告Y5や同8・Y6、同6・Y4の応対等は営業社員の知るはずのところであり、清算金の支払遅延、振込金の不足等も組織的なものといわざるをえず、オレンジ商品では商取引行為としての顧客らの説得の範囲を超えて会社ぐるみでの清算の引延ばしを図っていたということができ、これらの点は、オレンジ商品が保証金の流用や顧客からの手数料名目による搾取を企図し、実行していたことの一証左ということができる。

(四) オレンジ商品の経営状況と破産等

(1) 甲五、六の1ないし4、九の1ないし5、六二の1ないし7、六五、六六、乙三六、五三、被告17・Y15本人尋問の結果と当裁判所の福岡県消費生活センター等に対する調査嘱託の結果及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

① 本件訴訟代理人らは、従前からオレンジ商品の顧客らからの苦情等の相談に応じていたが、昭和六三年に顧客らのためにオレンジ商品を相手方とする現在高帳簿等の証拠保全の申立てをし、さらに平成元年一〇月二日付けでも当庁に対し、同様の証拠保全の申立てをするとともに、オレンジ商品の営業社員らに対し、「オレンジ商品商法が違法なものであり、営業社員らを相手方として損害賠償の請求をすることもあり得る。」旨を記載した通告書と題する書面(乙三六中の参考資料7)を送付し、テレビ報道等もされたため、オレンジ商品は、平成元年一一月三〇日付けをはじめとし、平成二年一二月二七日までの間、顧客八三件分につき、合計約一億二〇〇〇万円を支払う旨の和解をした。

しかし、その後も顧客らからの苦情が相次いだため、原告ら訴訟代理人は、平成三年四月オレンジ商品、被告泰平商事の動産等の仮差押手続をするとともに、その本案訴訟として本件訴訟を提起した。

② オレンジ商品は、平成五年五月一八日海外先物取引法違反および詐欺容疑で福岡県警によって捜索を受けたが、その後本件訴訟の原告らは、当裁判所に対し、オレンジ商品らの破産宣告の申立てをし、同年一二月一日当裁判所により破産宣告がされ、弁護士A23が破産管財人に選任された。

オレンジ商品が受領していた委託保証金は、他の関連会社等に貸し付けるなどされており、破産宣告時のオレンジ商品の預金残高は、極めて少額であった。なお、被告3・Y2は平成五年八月一八日付け陳述書(乙三六)において、顧客からの預かり金を現金で保管せず、グループの金融会社に貸し付けているのは、消費者弁護団への対抗措置であると述べている。

③ オレンジ商品を退社した被告16・Y14、訴外A9は、新たに訴外A24が設立した海外先物取引のユニオンコーポレーションに入社し、営業社員として稼働していたが、同社は平成四年四月に海外先物取引法違反で捜索を受け、その後被告16・Y14らは起訴され、有罪の判決を受けた。

(2) 右(1)のとおり、顧客等からの苦情等が相次ぎ、被告16・Y14らの営業社員らも同様の先物取引の活動を継続して摘発され、刑事上の処罰を受けるに至ったのは、オレンジ商品商法の違法性を裏付ける事実ということができる。

4  オレンジ商品商法の総合的評価

前記1のとおり、オレンジ商品は、原告らとの間で取引契約書等を取り交わし、リスクのともなう先物取引の契約であることの確認書類を徴するなどしているものの、その営業は、被告泰平商事との向い玉による委託保証金留保のための業務運営を基本とし、原告ら顧客の利益と基本的に対立する利害関係の上でされており、被告泰平商事が向い玉を建てることによって生じる損失は、オレンジ商品の顧客らからの手数料や委託保証金の運用等によってその填補とすべく、かかる業務方針のもとに原告ら顧客の建玉を操縦していたというべきであり、オレンジ商品らは、最終的には顧客らの損失の下に利益を上げることを企図していたものとの推認を免れないところである。前記3で認定の勧誘や取引の実体等は、その違法性を裏付けるものということができる。さらに具体的に述べれば、オレンジ商品と被告泰平商事及び営業社員らは、本件先物取引の仕組みを前提に所定の役割を分担することとし、まず、利益誘導のもとに余裕資金のない若年齢層の顧客の勧誘をし、取引契約締結後は早々と委託保証金を入れさせて最初の建玉をさせ、原告ら顧客の先物取引についての理解が十分ではなく、その確たる知識の取得が容易ではないことや原告らがサラ金等から保証金を借り入れており、その返済をしなければならないとの立場につけこんで、巧妙に顧客らの建玉を操作し、取引から逃れられない状況に追込み、頻繁に売買を繰り返させて手数料を徴し、建玉等の結果はほとんど偶然の結果として損失を被らせたのであって、被告らの営業行為は、顧客として実質的には不適格といえる委託者層を勧誘の対象とするものであり、海外先物取引法一〇条一号の「断定的判断の提供の禁止」に反し、同条四号の「一任売買の禁止」を形骸化した上、同条五号の「履行の不当な遅延の禁止」等にも反するものであり、一般社会的に許容される取引の形態を逸脱した違法なものというべきである。そして、その取引形態、業務運営の実体を見るとき、個々の取締役や営業社員が行なったにすぎない違法行為ではなく、オレンジ商品、被告泰平商事を含む泰平グループによる会社ぐるみの組織的な不法行為ということができる。

被告らは、前記のとおり、「原告らの勧誘に際し、先物取引が投機性を有するものであることを説明し、原告らからその確認書等を徴しており、原告らはその任意、かつ自由な意思で取引をしたものであり、取引行為により売買差益を得ていた者もいる。」などとるる主張するが、頻繁な両建てや手仕舞の拒否等の現実の取引の実体をみれば、右確認書等の一見厳格な手続がされたこととされ、顧客らの中に差益を得た者がいるのも、取引における顧客操縦の技術、その実体を見抜かれないための偽装工作とも評価できるものであって、被告らの行為を正当化できるものではなく、オレンジ商品の商法に違法性がないとの被告らの主張は採用することができない。

二  被告らの責任

1  オレンジ商品、被告泰平商事、被告3・Y2、同4・Y1、同5・Y3、同6・Y4、同7・Y5について

前記一で認定の事実によれば、原告らの被った損失は、オレンジ商品、被告泰平商事を含む会社ぐるみの組織的な不法行為というべきである。そして、被告3・Y2、同4・Y1、同5・Y3、同6・Y4、同7・Y5は、オレンジ商品、被告泰平商事の幹部社員であり、営業等の責任者であって、原告らに対する勧誘や取引契約の締結について営業社員らを指揮、監督していたものであり、海外先物取引及びオレンジ商品の商法や向い玉による会社の運営、営業の実体等については精通しており、オレンジ商品商法により顧客である原告らに損害が及ぶことを知りながら、原告らを取引行為に引き込み、これを操作して損害を被らせたということができるから、オレンジ商品と被告泰平商事及び右の被告らは、いずれも各原告に対し、民法七〇九条、七一五条による不法行為を理由とする損害賠償の責任を負うというべきである。

なお、被告Y5は、平成三年一〇月中旬に退社しているが、同日までの間に取引契約を締結した者らがその後に保証金を入れることは十分に予想されるところであるから、別表二「認容額一覧表」の「原告氏名」覧記載の各原告らの出捐に対する責任があると認められる。

2  その余の被告(被告16・Y14を除く)対する請求について

前記認定のとおり、オレンジ商品では、当初の勧誘と取引契約書への署名等及びその後の注文の獲得等を分担して契約の締結と最初の建て玉へと誘い込み、その後は営業社員らにおいて両建てを勧め、顧客らからの手仕舞等については担当が交代するなどし、いわば連係プレーのもとに取引を継続させており、原告らの損失はその必然の結果にすぎないということができるから、営業社員らは、顧客らである原告らの出捐全体についてそれぞれ関与が認められる原告との関連で不法行為の責任があるというべきである。

(一) 被告8・Y6に対する請求について

同被告が原告2・X2の担当として取引契約の締結に関与したことは、前記一、3、(一)、(2)、②で認定のとおりであり、原告52・X52の請求も理由がある。

原告31・X31の請求については、同被告は、その陳述書(乙七三)で、同原告に会って勧誘したことを認めている上、同原告の陳述書(甲二の31)には、一枚を三枚にさせられたとの記載部分があるところ、平成二年八月一〇日付けの受注伝票(乙個三一の7の1)も一枚から三枚に訂正されており、これを裏付けるものといえるから、同被告は被告14・Y12からの引継ぎを受けて同原告に建て玉をさせたものと認めるのが相当である。

同被告は、取引契約書を取り交わした者との関係で、さらに話を煮詰めて取引から抜けることができないようにするとの役割を担っていたと認められるから、同被告は、右各原告に対し、不法行為を理由とする損害賠償の責任がある。

(二) 被告Y7に対する請求について

原告2・X2の陳述書では、同被告が同原告を勧誘したとされているところ、受注伝票(乙個二の6)には一応これを裏付ける「Y7」の記載があり、オレンジ商品の会社組織図(甲一八)にも同被告名が記載されているが、被告4・Y1本人の報告書(乙八三)には「別の営業社員がいて勧誘をした。」の記載があるほか、被告8・Y6の陳述書(乙七三)には「営業社員のY7から報告を受けた。」との記載があるから、同原告を勧誘したのが同被告であるとは断定し難く、同原告の同被告に対する請求はその証明がないというべきである。

(三) 被告10甲斐に対する請求について

原告5・X5については、同被告が勧誘したことは前記一、3、(一)、(2)、⑤で認定のとおりである。

原告8・X8、同25・X25、同42・X42、同54・X54、同62・X62については、同被告が担当者の一人であり、別表証拠によれば、交渉段階において同被告は勧誘して取引契約を締結させ、これを確実なものとして継続的に売買をさせる役割を担っていたと推定されるから、同被告は、右各原告に対して責任を負うというべきである。

同被告は陳述書(乙七三)において、単に勧誘をしたのみである旨を述べているが、信用できない。

(四) 被告11・Y9に対する請求について

原告6・X6、同23・X23、同40・X40については、まず同被告が勧誘して取引契約書を取り交わす役割を担っていたものであることが認められるから、同被告は、右各原告に対し、生じた損害を賠償すべき責任があるというべきである。

原告10・X10については、その出捐を同被告がさせたとまで認めるに足りる的確な証拠はない。

(五) 被告12・Y10に対する請求について

原告13・X13、同16・X16、同24・X24、同32・X32、同38・X38、同45・X45、同46・X46、同47・X47、同55・X55、同63・X63の各原告について、同被告が担当者の一人であって、積極的に勧誘し、両建てをさせるなどして取引を継続させたことが認められるから、同被告は、右各原告に対し、その生じた損害を賠償する責任を負うというべきである。

原告60・X60については、同原告の陳述書(甲二の60)には、平成二年一〇月下旬頃に同被告がオレンジ商品の訴外A25と一緒に追加保証金を入れるように求めてきた旨の記載があるのみであり、これをもとに同被告が担当者の一人として同原告の損害の発生、拡大に関与、寄与したと認めることはできず、他に責任を認めるに足りる証拠はない。

(六) 被告13・Y11に対する請求について

原告19・X19、同21・X21、同23・X23、同43・X43については、同被告が営業担当の一人として勧誘し、取引契約を締結させ、以後の取引を継続させたことが認められるから、同被告は、右各原告に対し、損害賠償の責任がある。

(七) 被告14・Y12に対する請求について

原告50・X50について、同被告が勧誘などしたことは前記一、(3)、(一)、(2)、⑧で認定のとおりである。

原告7・X7、同9・X9、同15・X15、同20・X20、同31・X31については、同被告が担当者の一人として勧誘し、取引契約を締結させ、出捐させたことが認められるから、同被告は、右各原告に対して責任を負うというべきである。

(八) 被告15・Y13に対する請求について

原告50・X50についての責任があることは、被告14・Y12と同様である。

原告8・X8、同12・X12、同30・X30、同34・X34、同36・X36、同37・X37、同48・X48、同49・X49、同51・X51については、同被告が担当者の一人であることが認められるから、同被告は、右各原告に対して責任を負うというべきである。

(九) 被告17・Y15に対する請求について

原告61・X61については、同被告が担当者の一人として被告12・Y10らの後を継いで勧誘し、取引を始めさせ、保証金を受領するなどしたことが認められるから、同被告は、右各原告に対して責任を負うというべきである。

被告17・Y15は、陳述書(乙六二)や報告書(乙一三の13)、被告本人尋問において原告61・X61は任意で売買をしたと弁解するが、前記のとおり、オレンジ商品では向い玉を建てることを余儀なくされており、顧客らが委託するに当たっての判断の前提となる情報自体は真実であっても、営業社員らの勧める両建てや途転等が単に顧客らの利益のみのためであったとはいえないのであるから、売買と出捐を勧めた同被告も責任を免れないというべきである。

3  被告16・Y14に対する請求について

右被告は、適式の送達による呼出しを受けたのに、答弁書等の提出もないので、請求の原因事実は自白したものとみなされるところ、同被告に対する原告8・X8、同28・X28、同33・X33に対する各請求は、別紙二「認容額一覧表」記載の各損金のほか、その一割の弁護士費用を加えた金額の支払を求める限度で理由がある。

右争いのない事実によっても右原告らの慰謝料の請求は理由がない。

4  原告78-1、2・X78、X79両名の各請求について

甲67の9によれば、右原告らはそれぞれ訴外A14の実父及び実兄であるところ、A14は、サラ金から借入れをしてオレンジ商品との取引をしていたため、返済に困り、勤め先の会社から借入れをして返済に充てたこと、原告らはその借入れの連帯保証人になっていたが、その後に原告らにおいてA14に替って右会社に支払をしたことが認められるが、原告らはオレンジ商品と取引をしていたものではなく、単に右会社への支払をしたにすぎないから、右原告らの出捐を被告らがこれを負担すべき理由はないといわねばならず、他に右請求を認めるべき証拠はない。

三  原告らの損害について

1  各原告の損害額

原告らは、別紙四「出入金一覧表」記載のとおりの委託保証金の出捐と清算金を受領していたことが認められ(原告ら主張額の一部は各証拠に照らしても認められない。裁判所が認定した金額等は同表で訂正のとおりである。)、弁護士費用については、原告らは、被告らの不法行為により本件訴訟提起のやむなきに至ったものであり、別紙三「請求認容金額一覧表」の「弁護士費用」欄記載のとおり、損金の後記過失相殺後の一割の限度で本件と相当因果関係にある損害と認める。

2  慰謝料については、被告らの行為によって被った原告らの財産的損害は、その出捐した金額のうちの自らの責任に応じた賠償を得ることによって償われ、また原告らは、二〇才代から三〇才代とまだ若く、財産的損害に伴う苦痛も、右金額の賠償によって一応慰謝されるものと考えるのが相当である。

したがって、財産的賠償を超えて慰謝料の請求をすることは、本件においてはこれを認めることができない。

3  過失相殺

被告らは、「被告らにおいて、先物取引の危険性に対する十分な手だてを行い、そのうえ苦情処理等にも配慮していたのであり、それにもかかわらず、原告らに損害の発生・拡大が生ずるのは、有職の青年男子として充分な判断能力を有していた原告らに過失がある。」として過失相殺を主張するところ、原告らは分別のつく年齢であるとはいえ、先物取引については素人であること、被告らは、不適格な顧客ら層を狙い、断定的勧誘文言等を用いて巧妙に勧誘して取引行為に引き込み、その後はあたかも原告ら顧客の利益のために両建て等の行為がされているかのごとく、またその損失も取引行為の当然の結果であるかのごとく思わせるに至ったのであり、特に若年者である原告らにとって、その実体を見抜くことは困難であったともいうことができる。

しかしながら、原告らは、確認書等により一応の注意喚起の書面等の交付を受け、取引開始後も計算書等を確認し、損害の拡大を防止するために早期に手仕舞を求めるなどの行為をとることは可能であったものであり、もともと、時として大きな損害を被ることがあるのを容易に知り得たのに安易に勧誘の言を信じ、被告らの言うがまままに委託し、あるいはこれを承諾して取引を続けたのであり、原告らの対応等も損害発生、拡大の一因といわねばならない(現に原告らの中にはサラ金等において証拠金を工面し、あるいは家族らに取引行為を秘していた者もいるのは、本件先物取引が危険であり、家族らにも反対されることを予想していたからであるということができる。)。

しかして、本件に表れた諸事情、特に原告らの年齢や取引期間、投じた保証金額等には差異があり、これを個々に検討すれば、オレンジ商品商法の危険性に気付いて短期間で取引を終了させた者もいるが、これに気がつかないまま長期にわたって相当額を投じた者もあり、損失回復のためとしてやむなく継続を強いられたとの評価もできないではないものの、金額が大きく、期間も長期となれば、それ相当の注意を払うべきであることを考慮すると、原告らの過失について一律に取り扱うのは相当ではないというべきである。

原告らの年齢や期間及び取引の内容等を比較検討すれば、原告1・X1、原告7・X7、原告8・X8、原告17・X17、原告18・X18、原告19・X19、原告22・X22、原告29・X29、原告30・X30、原告36・X36、原告39・X39、原告50・X50、原告68・X68、原告70・X70、原告75・X75、原告76・X76、原告77・X77については、期間も短期間であり、投じた金額もほとんどが二〇〇万円程度であり、年齢も二〇才代であることなどを考慮すると、二割の限度で斟酌して損害から減額するのが相当である。

その余の原告らについては、同様に金額や年齢、期間等を総合しても四割の過失相殺を免れないものと認める。

原告らに右を超える過失があったと認めるに足りる証拠はないから、被告らの過失相殺の主張は右の限度で理由があり、その余は理由がない。

右の割合で各原告についての過失相殺をすると、原告らの各請求は、別紙二「認容額一覧表」の「認容額」欄記載の金額の限度で理由があり、その余は理由がないこととなる。

四  結論

よって、原告らの本訴各請求は、別紙二「認容額一覧表」の「被告番号」「認容額」の限度で認容し、その余(原告78-1、2・X78、X79両名の請求を含む。)はこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九〇条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条(なお、被告オレンジ商品については、口頭弁論終結後に破産宣告がされ、したがって、本件訴訟中の同被告に関する部分が中断状態にあることは前記認定のとおりであり、本件損害賠償請求債権も破産債権としてその行使も破産手続によるべきことになるから、仮執行の宣言は相当ではないとしてこれを付さないこととする。)をそれぞれ適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 牧弘二 裁判官 横山秀憲 裁判官 小島法夫)

別紙一 当事者目録

(平成三年(ワ)第一一四七号事件を「一事件」、同第二一五三号事件を「二事件」、同第二六九三号事件を「三事件」、平成五年(ワ)第一四七号事件を「四事件」という。)

1 福岡市<以下省略>

一事件原告 X1

2 福岡県遠賀郡<以下省略>

同 X2

3 福岡県筑紫郡<以下省略>

同 X3

4 福岡市<以下省略>

同 X4

5 佐賀県鹿島市<以下省略>

同 X5

6 福岡市<以下省略>

同 X6

7 佐賀県佐賀郡<以下省略>

同 X7

8 福岡市<以下省略>

同 X8

9 福岡市<以下省略>

同 X9

10 佐賀県杆島郡<以下省略>

同 X10

11 福岡県三井郡<以下省略>

同 X11

12 山口県下関市<以下省略>

同 X12

13 北九州市<以下省略>

同 X13

14 北九州市<以下省略>

同 X14

15 山口県下関市<以下省略>

同 X15

16 福岡市<以下省略>

同 X16

17 福岡市<以下省略>

同 X17

18 福岡県宗像郡<以下省略>

同 X18

19 大分県大分市<以下省略>

同 X19

20 山口県下関市<以下省略>

同 X20

21 北九州市<以下省略>

同 X21

22 福岡県飯塚市<以下省略>

同 X22

23 福岡市<以下省略>

同 X23

24 大分県日田市<以下省略>

同 X24

25 熊本県荒尾市<以下省略>

同 X25

26 福岡県久留米市<以下省略>

同 X26

27 福岡県八女郡<以下省略>

同 X27

28 福岡市<以下省略>

同 X28

29 福岡県大牟田市<以下省略>

同 X29

30 佐賀市<以下省略>

同 X30

31 佐賀県多久市<以下省略>

同 X31

32 佐賀県小城郡<以下省略>

同 X32

33 福岡県浮羽郡<以下省略>

同 X33

34 福岡県山門郡<以下省略>

同 X34

35 福岡市<以下省略>

二事件原告 X35

36 福岡県大牟田市<以下省略>

同 X36

37 福岡県八女郡<以下省略>

同 X37

38 福岡県小郡<以下省略>

同 X38

39 福岡県久留米市<以下省略>

同 X39

40 福岡県久留米市<以下省略>

同 X40

41 福岡市<以下省略>

同 X41

42 佐賀県鹿島市<以下省略>

同 X42

43 佐賀県三養基郡<以下省略>

同 X43

44 福岡県八女郡<以下省略>

同 X44

45 佐賀市<以下省略>

同 X45

46 佐賀県佐賀郡<以下省略>

同 X46

47 福岡市<以下省略>

同 X47

48 福岡市<以下省略>

同 X48

49 熊本県<以下省略>

同 X49

50 福岡県山門郡<以下省略>

同 X50

51 佐賀市<以下省略>

同 X51

52 福岡県筑紫野市<以下省略>

同 X52

53 大分県<以下省略>

同 X53

54 福岡市<以下省略>

同 X54

55 福岡県飯塚市<以下省略>

同 X55

56 熊本県下益城郡<以下省略>

同 X56

57 福岡県大川市<以下省略>

同 X57

58 佐賀県三養基郡<以下省略>

三事件原告 X58

59 福岡県久留米市<以下省略>

同 X59

60 福岡県筑後市<以下省略>

同 X60

61 福岡県朝倉郡<以下省略>

同 X61

62 熊本市<以下省略>

同 X62

63 福岡県田川郡<以下省略>

同 X63

64 長崎県諫早市<以下省略>

同 X64

65 福岡県八女郡<以下省略>

同 X65

66 福岡県大川市<以下省略>

同 X66

67 福岡県春日市<以下省略>

同 X67

68 福岡市<以下省略>

同 X68

69 福岡市<以下省略>

四事件原告 X69

70 福岡県筑紫野市<以下省略>

同 X70

71 福岡市<以下省略>

同 X71

72 福岡市<以下省略>

同 X72

73 福岡市<以下省略>

同 X73

74 福岡県粕屋郡<以下省略>

同 X74

75 福岡県粕屋郡<以下省略>

同 X75

76 福岡市<以下省略>

同 X76

77 長崎市<以下省略>

同 X77

78-1福岡市<以下省略>

同 X78

78-2福岡県小郡<以下省略>

同 X79

79 佐賀県松浦郡<以下省略>

同 X80

右原告ら訴訟代理人弁護士 井上道夫

同 植松功

同 大川正二郎

同 大神周一

同 久保井摂

同 堺祥子

同 大谷辰雄

同 作間功

同 桃原健二

同 原田直子

同 平田広志

同 藤原政治

同 美奈川成章

同 矢澤昌司

同 山下昇

同 野田部哲也

同 吉田純一

同 吉村敏幸

同 和智凪子

1 福岡市<以下省略>

一ないし四事件被告 オレンジ商品株式会社(口頭弁論終結後の破産宣告により中断中)

右代表者代表取締役 Y1

2 福岡市<以下省略>

同 泰平商事株式会社

右代表者代表取締役 Y2

3 福岡市<以下省略>

同 Y2

4 福岡市<以下省略>

同 Y1

5 福岡市<以下省略>

同 Y3

6 福岡市<以下省略>

同 Y4

7 福岡市<以下省略>

同 Y5

8 福岡市<以下省略>

一、二事件被告 Y6

9 東京都墨田区<以下省略>

一事件被告 Y7

10 福岡市<以下省略>

一ないし三事件被告 Y8

11 福岡県直方市<以下省略>

一、二事件被告 Y9

12 福岡市<以下省略>

一ないし三事件被告 Y10

13 福岡県粕屋郡<以下省略>

一、二事件被告 Y11

14 福岡市<以下省略>

同 Y12

15 福岡市<以下省略>

一ないし三事件被告 Y13

16 佐賀市<以下省略> 佐賀少年刑務所内

一事件被告 Y14

17 福岡市<以下省略>

三事件被告 Y15

右被告ら(被告Y14を除く)訴訟代理人弁護士 白垣政幸

同 敷地隆光

<以下省略>

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